
近年、日本市場を重要なターゲットとして見なす外資系製薬企業が増加しています。特にがん、希少疾患、遺伝子治療などの最先端分野において、日本市場への早期参入は競争優位性の確保に不可欠です。
しかしながら、日本独自の規制、PMDA(医薬品医療機器総合機構)とのやり取り、治験実施体制、医療機関との連携、倫理委員会(IRB)対応など、欧米企業にとって日本での治験立ち上げは非常に高いハードルとなっています。
本記事では、「日本初の治験実施」を目指す製薬企業向けに提供される治験立ち上げ・推進支援コンサルティングサービスの価値、優位性、業界課題、そしてその解決策について詳しく解説します。
1. 日本で治験を始める外資系企業が直面する5つの課題
(1)PMDA対応の不慣れ
欧米の当局(FDAやEMA)とは異なり、PMDAとの相談は書面と対面を組み合わせた独自の形式で進められ、特に治験計画届や照会事項の応答は高度な日本語運用と経験が求められます(PMDA, 2023)。
(2)治験計画書の日本化
本国のプロトコルをそのまま日本に持ち込むと、被験者リクルートや医療機関の実情と乖離し、治験が遅延する原因となります。
(3)SOPや体制整備の遅れ
日本法人が新設されたばかりのケースでは、治験に必要な手順書(SOP)や内部責任体制が未整備であり、治験実施前に多くの準備が必要です。

(4)適切なCROの選定と監査
治験成功のカギを握るのがCROの力量です。しかし、日本には大小さまざまなCROが存在し、外資系企業がその実力差や得意分野を見極めるのは困難です(Deloitte, 2023)。
(5)文化・言語ギャップ
倫理委員会資料や治験責任医師への説明、医療機関との契約においては、日本語での対応と現地事情への理解が不可欠です。海外本社からのリモート指示だけでは限界があります。
2. 支援サービスの提供内容:治験立ち上げをワンストップで実現
当社が提供する「治験立ち上げ・推進支援サービス」は、以下のような包括的サポートを特徴としています。
(1)治験計画書(プロトコル)の設計支援
- 日本の被験者背景・臨床現場に即したプロトコル調整
- 日本語版プロトコル・関連文書のレビュー・翻訳支援
- 被験者スクリーニング基準や評価項目の調整

(2)PMDA相談対応と照会事項対策
- 電子相談・対面助言の事前準備(ブリーフィングペーパー作成、質疑応答想定)
- 照会事項への回答文案作成とリーガルチェック
- 対応記録の保管と次回相談への活用支援
(3)SOP整備と治験実施体制の構築
- J-GCP準拠のSOPテンプレート提供・カスタマイズ
- 医療機関契約手順、報告フロー、Adverse Event対応手順の整備
- 委託者責任者・モニタリング担当者の役割設計
(4)CRO選定と監査代行
- 治療領域に強いCROの紹介と比較評価
- 提案書(RFP)の作成・見積交渉・監査対応
- 継続的なベンダーマネジメント
(5)治験開始後の推進・トラブル対応
- 登録進捗管理、リクルート支援
- モニタリング報告のレビューとリスク管理
- 医療機関とのコミュニケーション支援(対面・メール・書面)
3. このサービスの価値と差別化ポイント
◎ 初期段階から“治験成功”を見据えた設計
治験が予定どおりに完了するかは、立ち上げ段階の計画と体制構築の精度にかかっています。当社の支援は、治験開始だけでなく、「成功する治験」の実現を目標に設計されています。

◎ 日本市場とグローバル戦略の橋渡し
クライアント本社との英語での密な連携と、日本の医療制度や規制への深い理解を併せ持つため、グローバルチームと現地現場の“通訳者”として機能します(Gartner, 2023)。
◎ CROに依存しない中立的立場でのコンサルティング
通常、CROに委託する場合は、ベンダー都合で進行されがちです。当社は、製薬企業側に立った独立系コンサルティングであるため、クライアントの利益を最大化する提案が可能です。
4. まとめ:治験成功の鍵は、立ち上げ段階の設計にあり
日本市場での治験成功は、適切な戦略設計と実行体制の構築、そして現地事情への適応力にかかっています。そして、それを実現するためには、単なる手続き代行ではなく、「治験戦略パートナー」として寄り添う支援が求められます。
初めて日本で治験を行う製薬企業にとって、当社のコンサルティングサービスは単なる外注ではありません。規制対応から医療機関ネットワーク構築、そしてCRO監督までを一気通貫でサポートする“実行力のある戦略部門”なのです。
2025年以降、グローバル治験の日本展開はより加速していきます。今こそ、日本治験成功のために、“良き伴走者”を持つことが、新薬開発の未来を左右する決定的な差になるでしょう。
外資系製薬メーカーの日本法人立ち上げにおけるIT戦略立案支援サービスの価値と市場規模

参考文献
- PMDA (2023) Clinical Trial Consultation Guidelines. 医薬品医療機器総合機構.
- Deloitte (2023) CRO Benchmark Survey Japan Edition. Deloitte Tohmatsu Consulting.
- IQVIA Institute (2023) The State of Global Clinical Trials 2023. IQVIA.
- Gartner (2023) Life Science Industry Report: Asia-Pacific Region. Gartner Group.
- BCG (2024) Clinical Innovation in Oncology and Rare Disease Trials. Boston Consulting Group.
- 厚生労働省 (2023) 『治験実施件数調査結果』.