
製造販売後調査(PMS)は、新薬承認後の安全性・有効性の実地検証として、製薬企業が義務として取り組む極めて重要な活動です。2025年現在、PMSの実施件数や対応業務は増加の一途をたどっています。調査の種類ごとの対応が煩雑化し、医薬企業の現場が疲弊する状況も見受けられます。
特に同一企業が複数のPMSを同時に管理する場合、それぞれの手順・評価項目・報告要件が微妙に異なることから、効率と品質のバランスを取ることが困難になりがちです。
本記事では、そうしたPMS業務の非効率性に着目し、調査の共通化・標準化、ナレッジ活用、評価項目の比較分析を通じて、「PMSのプロセス自体を改善」した支援事例をご紹介します。
1. 調査件数の増加とともに現れる現場の限界

複数のPMSにおける「よくある非効率要因」
- 各調査において異なる手順書が存在し、確認作業が煩雑
- CROからの問い合わせ対応が属人化し、対応履歴の共有ができていない
- 調査票・再調査票の様式や回収期間が統一されておらず、進行管理で混乱が生じる
- 共通評価項目があるにもかかわらず、項目の表現や回収基準がバラバラ
こうした課題は、リスクベースの監査における指摘対象にもなり得るだけでなく、社内負荷やスケジュール遅延の大きな原因となっています(PMDA, 2023)。
2. 支援内容:業務効率化のための包括的アプローチ
有料はサービスプロバイダーは、複数の製造販売後調査を一括で支援する際、以下のような多面的アプローチにより業務効率と品質の両立を実現しています。
(1)手順書(SOP、WIなど)の共通化・最適化
- 複数の調査に共通する基本フローを文書化
- 再調査の受付・レビュー・修正依頼プロセスの標準化
- 社内SOPやCRO向け手順書のテンプレート化と教育支援
(2)ナレッジベースの構築と問い合わせ対応の迅速化
- CROからの問合せ記録を一元化し、FAQ形式で蓄積
- 回答テンプレートを整備し、担当者間で迅速な対応が可能に
- トラブル傾向の早期発見と未然防止の仕組み化

(3)評価項目の比較分析と調査票改善
- 各PMSの評価項目、調査票設問、回収期間を横断的に比較
- 重複項目の簡素化・統一、不要な質問の削除提案
- データベース構造との整合性も考慮し、データ解析に適した設計へリファイン
(4)業務効率化ツールの導入・整備
- Excel/VBA/Pythonなどを用いた共通進捗管理テンプレートの導入
- 調査別状況を視覚化するダッシュボード構築(BIツール等も併用可能)
- 案件別・日付別のタスク自動通知フローの整備
3. 成功事例:調査ごとの「違い」を見える化し、共通化へ
クライアントの背景と課題
大手製薬企業A社は、同時期に4件の製造販売後調査をCROへ委託。各調査で評価項目・回収基準・SOPが異なっていたため、社員の確認業務が煩雑となり、調査進行が遅延していました。また、CROからの問い合わせが属人化し、ナレッジマネジメント(チームの知識共有と効率的な活用)がなされていない状態でした。
弊社の支援と成果
- 全調査の手順書と実務フローをレビューし、共通化可能な項目を特定
- 手順書テンプレートを導入し、教育プログラムを短期間で実施
- 評価項目の差異を分析し、表現・基準の統一と簡素化を提案
- 問合せ対応記録をナレッジベース化し、問合せ対応時間を平均35%削減
- ダッシュボードで調査進行を一元可視化し、進捗遅延をゼロに
結果として、複数の調査が予定より早く完了し、報告書の精度も向上。部門内での評価も高まり、次年度以降の運用にも継続活用されるフレームワークが完成しました。

4. サービスの差別化ポイント
◎ 医薬品のPMSに特化した専門チームによる支援
- DM、統計解析、薬事、安全性など多職種が連携
- 調査票設計や解析仕様の観点からも「使える設問か」を検証可能
- 単なる事務支援にとどまらず、調査設計レベルでの提案力
◎ クライアント社内業務との整合性重視
- 他部門(PV、メディカル、品質保証)とのフロー統一も支援
- SOPや報告ルールの「現場運用に即した最適化」へと導く
◎ 再利用可能な仕組み作りを重視
5. まとめ:PMS業務の“プロセス改善”こそが真の差別化戦略
PMSは、単なる実施義務ではなく、医薬品の価値を証明し、企業ブランドを守る重要な業務です。特に複数調査を同時に管理する場合、いかに手順や業務を“仕組み化”できるかが、成果と効率の分かれ道となります。
優良サービスプロバイダーによる支援であれば、「今この案件をどうこなすか」だけでなく、「来期以降に備えた調査体制の構築」までを視野に入れた包括型PMS支援です。
品質とスピードの両立で、あなたのPMSを次のレベルへと導いてみませんか?
【業務負荷と品質課題を一挙に解決】製造販売後調査(PMS)部門支援の真価とは?

参考文献
- PMDA (2023) PMS実施ガイドライン. 医薬品医療機器総合機構.
- Deloitte (2024) Post-Marketing Operations and Complexity Management. Deloitte Japan.
- IQVIA (2024) Pharmacovigilance & PMS Benchmark Report. IQVIA Institute.
- BCG (2023) Operational Transformation in Pharmaceutical Companies. Boston Consulting Group.