
医薬品のライフサイクルにおいて、安全性情報(Pharmacovigilance, 以下PV)の適切な管理は、企業の信頼性とレピュテーションを守る重要な業務です。2025年現在、製薬業界におけるPV部門は、グローバルでの情報統合やCROへの業務委託、そして各国規制への対応など、かつてないほどに複雑化・高負荷化しています。
本記事では、製薬企業の安全性管理部門を支援した事例をもとに、当社のPV業務サポートサービスの価値とその差別化ポイント、現場が直面している課題とその解決策、そして今後の業界動向を解説します。
1. なぜ今、PV部門は限界を迎えているのか?
(1)CROへ業務委託しても「やることは減らない」
近年、PV業務の一部(ケースプロセス、入力、トリアージなど)をCROへアウトソースする企業が増加しています。しかし、委託先からの問い合わせ対応、SOPの整備、安全性システムの設定、監査対応など、製薬企業側でしかできない業務が依然として多く存在しています(Deloitte, 2023)。
(2)GVP対応とグローバルポリシーの板挟み
日本ではGVP(Good Vigilance Practice)に基づく義務があり、市販後副作用報告や再審査対応などを国内規制に従って実施する必要があります。一方で、本社のPVポリシーやシステム運用ルールとの整合性も求められ、現場では複雑なルール調整と文書整備に追われることになります(PMDA, 2023)。
(3)リソース不足と属人化
PV業務は、規制変更や新製品の発売、RMP更新などで突発的に繁忙化しがちです。CROに依存しすぎると、「自社にナレッジが残らない」「緊急時に対応できない」というリスクが高まります(PhRMA, 2024)。
2. 当社が提供するPV業務サポートの概要
当社では、製薬企業のPV部門と協業し、以下のような領域を支援しています。
(1)CROからの問い合わせ対応支援
- ケース処理に関する質問への回答草案作成
- 本社PVとの連携調整(英日バイリンガル対応)
- 業務プロセスの明確化と問い合わせ発生の予防
(2)安全性関連SOPの策定・改訂
- GVPに準拠した手順書の作成(SOP, WI, 作業手順書)
- 英文ポリシーのローカライズと整合性検証
- 改訂履歴・トレーニングログの管理支援
(3)安全性情報システムの設定方針策定支援
- グローバルPVシステム(Argus, ARISg, Veeva Vault Safetyなど)の設定支援
- 日本独自項目(国内症例、医療機関番号等)の取り込み方法検討
- システム操作フローの作成とユーザートレーニング
(4)バリデーション活動支援
- CSV(Computerized System Validation)文書の作成支援
- IQ/OQ/PQドキュメントのレビューと監査対応
- SOPとの整合性チェックと逸脱報告支援

3. 成功事例:PV業務負荷の軽減と品質の両立を実現
背景と課題
ある外資系製薬企業では、市販後新薬の副作用報告数が急増。CROに業務委託していたものの、安全性管理部門内での問合せ対応やSOP整備、システム設定の見直しなど、自社業務が逼迫している状況でした。
当社の支援内容と成果
- 問合せ対応ルールを明文化し、CROとのやり取りの属人化を解消
- PV関連SOPを再編し、監査で指摘されにくい文書体系を構築
- PVシステムの設定見直しを主導し、処理ミスの発生率を40%削減
- バリデーション記録を監査対応用に整備し、PMDA査察を無事通過
結果として、部門内の業務負荷が軽減されただけでなく、「品質と効率の両立」という本質的な価値を提供することができました。
4. このサービスの差別化ポイント
◎ 製薬業界専門の実務経験者による支援
- SOP策定、システム設定、監査対応など、実務を熟知したコンサルタントが支援
- PV業務に精通したバイリンガル人材によるグローバル連携支援

◎ CRO任せにしない、製薬企業側支援
- 委託業務の境界整理、CROとの関係管理も支援
- 自社内にナレッジを蓄積する仕組み作りを支援
◎ 実行支援型コンサルティング
- 単なるアドバイザリーでなく、手も動かす実行支援型
- クライアントと机を並べ、実務を共に進める“パートナー型支援”
5. 今後のPV部門を取り巻く環境とニーズ
グローバル化とデジタル化の進展
- ICH E2B(R3)準拠の報告体制整備
- Veeva Vault SafetyなどクラウドPVシステムの導入拡大
- AIを活用したシグナル検出・重複チェックの普及(IQVIA, 2024)
厳格化する監査と査察対応
- PMDAのGVP適合性調査の頻度と精度が向上
- SOP・記録・教育ログに関する整備が必須項目に(PMDA, 2023)
これらの背景から、「部分的に業務を補完できるプロフェッショナル人材」への需要はますます高まっており、弊社のようなハイブリッド型支援は今後ますます注目されるでしょう。
6. まとめ:安全性管理は「委託すれば終わり」ではない
安全性管理は、委託する業務と自社で担う業務を適切に分け、それぞれを高品質かつ効率的に回すことが必要です。そしてそのバランスを見極め、適切に補完する支援こそ、弊社が提供するサービスの中核です。
「リソース不足だけど、品質は妥協できない」
「CRO任せにせず、自社でもナレッジを残したい」
「次の監査までに体制を整えておきたい」
こうした声に応える、安全性管理部門向けサポートサービスを、あなたの会社にも導入してみませんか?
2025年現在の日本医薬業界の実情と展望

参考文献(Harvard Style)
- PMDA (2023) GVP調査・査察ガイドライン. 医薬品医療機器総合機構.
- Deloitte (2023) Pharmacovigilance Trends in Japan. Deloitte Tohmatsu Consulting.
- PhRMA (2024) Annual Survey on Global Safety Operations. Pharmaceutical Research and Manufacturers of America.
- IQVIA (2024) Automation and AI in Pharmacovigilance. IQVIA Institute.