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はじめに|なぜ今「ICH E6(R2)」を知るべきか?

「GCP対応はCROに任せているからうちは関係ない」
そんなふうに考えていませんか?

でも実は、ICH E6(R2)は、製造販売業者(MAH)にとっても極めて重要なガイドラインです。医薬品を日本国内で販売するためには、治験データがGCP(Good Clinical Practice)に準拠していることが必須。その国際的な基準が「ICH E6」です。

本記事では、難解な条文をやさしく噛み砕きつつ、MAHとして何に気をつけるべきかを中心に、実務に役立つ視点で解説します。


ICH E6(R2)とは何か?

ICH E6とは、国際医薬品規制調和会議(ICH)が定めた治験(臨床試験)に関する国際基準です。
現在の最新版はE6(R2)で、2016年に改訂されました。

🔍 ICHとは?

ICH(International Council for Harmonisation)は、アメリカ(FDA)、ヨーロッパ(EMA)、日本(PMDA/厚労省)などの規制当局と製薬業界が参加する国際組織。各国で異なるルールを「統一」するためのガイドラインを作成しています。


ICH E6(R2)の目的は?

ICH E6は、以下のような治験に関する「国際共通ルール」を示すものです:

  • 被験者の人権・安全の保護
  • 臨床試験データの信頼性と透明性の確保
  • 医薬品の承認審査に耐えうる品質の担保

つまり、患者にとって安全で、規制当局からも信頼されるデータを生み出す仕組みを作ることが目的です。


GCPとは?臨床試験の「お作法」

ICH E6の中身は「GCP(Good Clinical Practice)」という考え方に基づいています。
GCPとは、臨床試験を行う上での倫理・科学・管理のルールのこと。

例えばこんな内容が含まれます:

  • インフォームド・コンセント:被験者に十分な説明をして同意を得る
  • SOP(標準業務手順書)の整備と運用
  • データの完全性(Data Integrity)を守るための記録方法
  • モニタリング監査(Audit)による第三者チェック

E6(R2)で追加された「新しい視点」

R2改訂では、従来のGCPに加え、リスクベースアプローチテクノロジー活用の視点が追加されました。

1. リスクに基づく品質管理(Quality by Design)

GCPでは、すべてのリスクを完璧に管理しようとするのではなく、「影響が大きい部分にリソースを集中」することを推奨します。たとえば、次のような視点が重視されます:

  • 試験デザインで最も失敗リスクが高いポイントはどこか?
  • データの中でクリティカルな項目は何か?
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2. ベンダー管理とアウトソーシング

MAHがCRO(治験業務委託先)に業務を委託する場合でも、最終責任はMAHにあることが明記されています。

📌つまり、「委託しているから知らない」では済まされないのがR2の考え方です。

3. 電子的記録・署名の活用(Part 11との関連)

eCRFやEDCなど、電子的記録の活用とその管理方法についても求められるようになりました。


製造販売業者が押さえるべき5つのポイント

✅ 1. 治験の設計段階から関与する姿勢

PMDA相談やプロトコルレビューに総括製造販売責任者(総責)も関与しましょう。

✅ 2. ベンダー(CRO)管理の強化

  • 委託契約の範囲
  • 業務移管のプロセス
  • KQI(品質指標)の設計とレビュー体制

✅ 3. QC体制とSOP整備

GCP準拠のためにQA(品質保証)部門のチェック体制を見直す必要があります。

✅ 4. 電子的記録・署名(Part 11)への対応

FDAやPMDAの査察ではシステムバリデーション(CSV)やアクセス管理も重要視されます。

✅ 5. 監査(Audit)とCAPAの運用

監査後の是正処置(CAPA)が形骸化(ただ書類があるだけで正しく運用・維持されていない)していないかを点検します。


よくある誤解

誤解正しい理解
GCPは医師やCROだけの話MAHにも説明責任と品質確保の義務あり
SOPがあればOK運用と記録がなければ意味がない
1回作ればずっと使えるGCP要件は進化する。継続的な見直しが必要

まとめ|ICH E6(R2)は「責任ある委託」と「リスク視点」

製造販売業者は、治験の実施主体ではありませんが、「委託する責任」と「品質を保証する責任」を持つ存在です。
ICH E6(R2)は、単なるチェックリストではなく、安全・倫理・品質を両立する経営判断の軸として活用すべきです。

日本のPMDA要件に基づく医薬品ライフサイクルとは?【薬事承認から製造販売後まで完全解説】

セブントゥワン株式会社:ヘルスケア・ライフサイエンス業界における多岐の経験と人財を有し、幅広いサービスを提供します。


参考文献

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投稿者

ryuta@socraticincorporated.com

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